第26回河童サミット日本海6月8日から〜隠岐へのご縁

河童連邦共和国名誉顧問 田辺達也

 今年の河童サミットは、日本海域の隠岐(島後)と大山(米子・境港)をリンクする壮大な催しです。
 上げ潮に乗る大山隠岐かっぱ村の意気込みと、千代むすび酒造さんのご支援を心強く思います。
 わたくしには、これまで米子に3度、境港に3度、隠岐に2度訪問の不思議なご縁に加え、贅沢に、日野川流域踏査や名和氏ゆかりの伯耆散策もあります。
 そのころお付き合いの始まった河童族とは、年賀状や資料のやり取りが今もつづいており、この人脈は大変な宝物です。
 隠岐の島へは、2回とも日本海からのラブコールでした。
 最初は1996年10月─「全国かたりべサミットin隠岐」を、〈隠岐と河童伝説〉のテーマで競いました。舞台は、樹齢2千年の八百杉で知られる隠岐総社の玉造酢命神社でした。東北は遠野から、九州からは八代でした。遠野は女性の語り部でしたが、見事な話芸に舌を巻き、伝承文芸の立ち後れを痛感しました。
 二回目は2001年8月─隠岐の島文化会館と、人尾川かっぱ公園で開催された「隠岐・島後かっぱ交流会」です。わたくしは〈九州のかっぱ王国と河童たち〉と題し講演しました。
 このとき、隠岐かわこ(河童)の語り部「唐人屋」のご当主、松岡豊子さんと歓談することができ、資料もたくさん頂きました。街おこしリーダーで歴史と民俗に精通する西郷町の斉藤一志さんや、「奈良屋」の松本悦夫さん・佳都子ご夫婦には、西郷港─八百川流域散策、太平記ゆかりの史跡めぐり、海の民俗資料館見学など、大変お世話になりました。
 隠岐の民話なら、海の道を自由に行き来していた古代、渡来人「木の葉人」や「海士」の物語。伝説なら、河童封じに秀吉拝領の刀もからむ「唐人屋のカッパ・権かっぱ大明神」を楽しみました。唐人屋と浅草曹源寺の河童縁起の類似から、双方の交流や説話の回遊に驚いたものです。
 北前船の船頭さんと、島娘の恋物語でしょうか。民謡「しげさ節」と「しげさ踊り」に、天草・牛深発のハイヤ節と、二重写しのロマンを感じました。
 隠岐へ行くなら、日本生まれのカナダ外交官ハーバート・ノーマンが「隠岐の事件は、明治維新後、酢年間における日本の経験の縮図である」と書いた隠岐島民の武力蜂起と世界で初めての自治政府樹立という、フランスのパリ・コンミューンに比定される激動・重厚な近代史を学ぶ余談もありそうです。作家・翻訳家の松本郁子さんの著書「神と語って夢ならず」(光文社)が話題になっており、前出、斉藤さんは取材に協力しています。
 松岡豊子さんには、是非再開したいものです。
 隠岐に限定しましたが、日本海サミットには魅力いっぱい。
 九州からエールをおくります。

(河童共和国大統領・八代市)

本コラムは、2013年5月5日発行・かっぱ新聞(発行所/河童連邦共和国)に寄稿したものです。


第26回・河童サミット日本海(大山・隠岐)

水と自然と文化の調和

平成25年6月8日(土)・9日(日)・10日(月)
主催:河童連邦共和国